lakkieのなぐりかき(書・描)

田舎主婦が、TEAM NACSとLA"-PPISCHを主に大きなひとりごとをおみまいします

カッコイイです音尾さん

 

目と目の間が離れていても、アナタの心は離さない――。演劇ユニット「TEAM NACS」の最年少メンバー・音尾琢真(39)のキャッチフレーズである。新体操経験者であり、ナックスのなかでは運動神経No.1。声質もよく歌もダンスも抜群にうまい。全国放送のドラマや数々の映画に出演している実力派で、舞台作品に注目すると、大泉洋安田顕らを抑え、もっとも活躍しているといえるだろう。しかし、大泉、安田、戸次重幸、森崎博之と個性豊かなメンバーばかりのナックスのなかでは、もっとも印象が薄いのもまた音尾かもしれない。そんなナックス“最後の切り札”音尾琢真とは? 


◆失敗と成功を第三者目線で見つめる頭脳派

 ナックスファンの間では、音尾といえば“末っ子キャラ”。実年齢の面もあるが、もともとの気質も手伝って、4人の兄貴たちに過去の恋愛遍歴を赤裸々に暴露されるといった、理不尽ないじりもたびたび受けている。若干目が離れていることから、大泉に冒頭のコピーを提案され、バラエティ『ハナタレナックス』(HTB)でもあらゆる顔芸を披露し、そのポテンシャルを発揮してきた。自身もラジオやテレビで“魚顔”を持ちネタとして笑いを誘うなど、決してイケメン枠に入るタイプではない。

 しかし、末っ子のまま、ただぼんやりと周囲に甘えているばかりではない。末っ子だからこそ、兄たちの失敗と成功例を第三者目線で見つめ、主張すべき点や静観するところを瞬時に察知できる、チームいちの頭脳派という見方もできる。リーダー・森崎は、雑誌のインタビューで「大事なことを、音尾に相談することもある」と明かし、同じく大泉も「もうナックスの末っ子キャラは音尾じゃない」と語っている。

 ここ数年、音尾のピンでの映像出演は目覚ましく、NHK大河ドラマ龍馬伝』(2010年)では龍馬の幼馴染・望月亀弥太を務め、『世にも奇妙な物語’14秋の特別編』(フジテレビ系)では、仲村トオルとのタッグで準主役に。そして今年は、『花燃ゆ』(NHK総合)で2度目の大河出演を果たし、松下村塾生の品川弥二郎を演じている。

◆舞台で最大限に発揮される瞬発力と器用さ

 映像での活躍も目覚ましいが、彼の魅力がもっとも伝わるのは、やはり舞台ではないだろうか。ナックス本公演で披露する瞬発力と器用さはもちろん定評があるが、いまや客演として引っ張りだことなった安田、戸次らメンバーに引けを取らない大物演出家からラブコールを受けているのが、音尾だ。

 主な作品は、岸谷五朗寺脇康文の『地球ゴージャス VOL.10「星の大地に降る涙」』(2009年)に始まり、翌2010年には関西演劇の重鎮・後藤ひろひとの舞台『THREE BELLS~聖夜に起こった3つのふしぎな事件~』。そして、2012年には主演・明石家さんま、脚本&出演・生瀬勝久、演出・水田伸生の舞台『PRESS』に招かれ、現役スター気どりの売れない役者をユーモアたっぷりに好演。さんま&生瀬コンビに負けず劣らず、劇場を沸かせた。

 昨年はラーメンズ小林賢太郎のソロプロジェクト『ノケモノノケモノ』で主演。この大抜擢について小林は、自身のホームページで「その表現力に惚れ込みました」と明かし、上演前にして「僕の脚本で音尾琢真が演じれば絶対おもしろい」と断言。事実、同舞台での音尾は、スピード感を保ちながらも繊細なパフォーマンスで観客を引き込み、それまで誰にも主役の座を譲らなかった演者・小林賢太郎の存在感を、見事に上回った。

◆大御所演出家たちから求愛される実力派

 彼の舞台の真骨頂は主演作『ORANGE』だろう。関西出身の劇団・PEOPLEPURPLEの脚本家・宇田学の戯曲で、初演は2004年。以降、再演を重ねてきた話題作で、音尾は2011年から主演として登板し、2013年、2015年と続投。ナックスのなかで主演舞台が再々演を迎えたのは、唯一音尾のみである。

 同作は、1995年の阪神・淡路大震災が起きたあの日、目の前の光景に打ちひしがれながらも人命救助を続けた消防士たちの群像劇。家族を失った被災者から「なんで助けてくれへんの? 人殺し!!」と、行き場のない苦しみと怒りを投げつけられた、彼らの葛藤、挫折、日々の苦悩を浮き彫りにした秀作だ。同作での音尾は、末っ子キャラを封印。少し短気ながらも頼りがいがあり、情に深く男気溢れる消防士を熱演している。

 大昔の記憶を紐解けば、ラジオ『大泉洋のサンサンサンデー!』(北海道放送)での“ナックスで一番不細工なのは?”というテーマにおいて、大泉の対抗馬として大熱戦を繰り広げた音尾だが、今や無精ひげの似合う寡黙な渋メンに。一見地味だが、実は大御所の演出家たちから求愛されるという実力派となった。そんな売れてる感ゼロの実力派・売れっ子俳優・音尾は、いまもっともチケットの取れない劇団「TEAM NACS」の“切り札”なのだ。

 

 オリコンスタイルより

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